野球肩って何!? 第2話
前回からはじまった『野球肩って何!?』が、今回の第2話からいよいよ症例を例に、羊ヶ丘病院 理事長・副院長岡村健司ドクターの協力の下、紹介させていただきます!もしやすでに痛みを感じている選手は必見ですよ!もしかするとすでに野球肩の疑いがあるかも?
みなさんこんにちは。羊ヶ丘病院整形外科の岡村健司です。
今日は、野球肩がどうして起こるか、また実際に肩にどのような障害が起きるのか、具体的に投球フォームを例にしてお話しします。
野球の投球フォームをピッチャーの投球フォーム(図1)を例に見てみると以下の5つのフェーズ(投球相)に分けることができます。
1)ワインドアップ期
ボールを持った手がグラブの中に収められたまま踏み出し脚を上げていく段階です。このフェーズでは肩に障害が出ることはありません。
2)アーリーコッキング期
ボールを持った手がグラブから離れて投球動作に入り、踏み出し脚が着地するまでのフェーズです。腰の開きが早すぎたり、投球側の腕が後ろに引かれすぎると肩の前方に大きな力がかかり、肩の障害の原因になります。
3)レイトコッキング期
踏み出し脚が着地してから投球する方の肩が最大外旋(胸を大きく張った位置)するまでの段階です。肩の前方に大きな力がかかるため、繰り返しの投球で肩の前方への緩みが生じ、肩関節唇損傷や肩前方不安定症の原因となります。また肩の緩みをおさえるために腱板に大きなストレスがかかり腱板炎や腱板損傷が起きます。
4)アクセラレーション期
投げる方の肩が最大外旋から加速しボールをリリースするまでのフェーズです。最大外旋の時(トップ)に肘が下がっていると肩の関節に“あそび”ができるため腕を振る時に肩関節にぶれが生じます。肩関節にぶれがあるとインピンジメント症候群、腱板損傷、関節唇損傷などの障害が出ます。トップの位置では肘は両肩を結んだラインの延長上にあって上腕骨と肩甲骨をロックして体幹の動きで腕を振るのが力学的に肩に負担が少ないフォームです(図2)。
5)フォロースルー期
ボールが手から離れて腕が振り下ろされるまでのフェーズです。腕を振り下ろす時に肩が遠心性に引っ張られるので、関節包、腱板、二頭筋、三頭筋の付け根に大きな力がかかり肩の下方不安定性、腱板損傷、上方関節唇損傷(スラップ病変)、ベネット骨棘形成などの障害が出ます。肩の抜けそうな感じや引っ掛かり感がこのフェーズで出ることがしばしばあります。フォロースルーでは振り下ろされた腕は体に巻きつけるように投げることが障害予防に大切です。
このようにボールを投げる動作はコッキング期やアクセラレーション期に肩関節の前方に大きな力が加わるために、肩の前方に“ゆるみ”が生じることが多いです。そして肩にゆるみがある状態でボールを投げ続けると、しだいに肩関節の関節唇や腱板に障害をもたらすことが多いと考えられています。
したがって野球肩の予防には、1)正しい投球フォームを習得すること、2)投げすぎないこと、3)投球動作のストレスに負けない丈夫な肩を作ることが重要です。
次回からは野球肩のそれぞれの疾患についてお話しします。まずはインピンジメント症候群について話す予定です。
【リハビリ室スタッフ紹介】
リハビリテーション科 作業療法士
●及川 直樹(30歳)
~スポーツとの関わり~
小学校時代は小3から小6まで野球を!中・高バスケットボールに夢中!大学では札幌医大で野球部!現在朝野球チームのプレーイングマネージャー。
発行人から・・・
少年野球を経験後、バスケットボールも経験!スポーツには大変理解のある及川さん。リハビリも楽しくなりそうな良い感じのお兄さんです。
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