『野球肩って何!』第4話!
今回で4回目となる『野球肩って何!』どうして起こるのか・・・?症例を下に、羊ヶ丘病院 理事長・副院長岡村健司ドクターの協力の下、引き続き紹介させていただきます!野球肩の色々な症例の中から今回は関節唇断裂を図を用いて紹介!
みなさんこんにちは。羊ヶ丘病院整形外科の岡村健司です。
前回は野球肩で最も多い原因のインピンジメント症候群についてお話ししました。今回はやはり野球肩に多い関節唇断裂についてお話しします。
まず、関節唇とはいったいどのようなものなのか説明します。関節唇は肩の受け皿の骨(肩甲骨関節窩)の輪郭を土手のように覆っている線維性の組織で、膝でいえば半月板のようなものです。関節唇はその部位で上方関節唇、前方関節唇、後方関節唇、下方関節唇に分けられます。上方の関節唇には上腕二頭筋長頭筋腱という肩のぶれを押さえる腱が付いています。前方、後方、下方の関節唇には関節包靭帯という肩関節が前後にずれないように働く靭帯が付いています(図1)。つまり関節唇は肩関節が前後、上下にぶれないように、しっかりと支える働きをしています。通常、関節唇は骨にしっかりと付着していますが、肩を使いすぎたり、肩にけがをしてはがれることがあります。これが関節唇断裂です。野球ではボールを投げすぎたり、ダイビングキャッチで肩を打撲したり、スライディングで肩をねじったりして関節唇を傷めます。はがれる部位は肩の上方、前方、後方と様々ですが、野球肩では上方の関節唇がはがれること多いです。上方の関節唇がはがれるとスラップ病変という病名がつきます(図2)。上方の関節唇がはがれると肩の前後方向と下方のぶれが大きくなり、投球時に肩の痛みや違和感(肩が抜ける感じ、ひっかかり感)を覚えるようになります。(ちなみに前方関節唇は肩が脱臼、亜脱臼した時に断裂し、強い前方不安定性が残ります。)残念ながら、一度はがれた上方関節唇が自然について治ることはありません。
上方関節唇断裂の診断はなかなか難しくて外来診察とMRI、CTでおおよそ診断できますが、最終的に肩に内視鏡を入れてみて初めて診断されることも多いです。症状は野球選手では投球時、コッキング期から加速期での肩の痛みや違和感で、症状がそれほど強くない場合もあります。
治療はまずは肩を休めてあげることが必要です。肩を休めることではがれた関節唇が着くことはありませんが、痛みが軽快することがあります。症状が良くならなければ、肩甲骨周囲の筋力訓練、腱板訓練(インナーマッスルエクセサイズ)を行い肩のぶれを軽減させます。痛みが強ければ、痛み止めの薬を処方し、炎症止めの注射をします。しかしこのような保存治療を行っても症状が改善されなければ手術をしてはがれた関節唇を縫合します(図3)。手術は小さな傷3か所から内視鏡を入れて行い30分くらいで終わります。入院は2-3日です。手術後は肩のリハビリを行い、手術後3ヵ月で投球を再開し、約6か月で試合に復帰します。
次回は肩関節前方不安定症(亜脱臼)についてお話しします。
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