スリークォータースローをチェック!
今回で8回目となる『ドクターのフォームチェック』今回紹介するのは、札幌市白石区少年野球連盟所属 東札幌中央ビクトリーズ(小6)渡辺佑汰投手。去る8月28日太陽球場で行われた、第32回札幌市各区対抗少年軟式野球オールスター戦で、白石区チームの先発投手として投げている姿が、印象的だった!身体能力の高さ!しっかりとフォーム改善が出来た時、凄まじいボールを投げる可能性感じドクターチェックをお願いした!
☆たきうち整形外科スポーツクリニック
☆休診のお知らせ☆
瀧内院長が「秋季北海道高等学校野球大会」の大会ドクターを務めるため、
下記の日程で昼の部が休診となります。
10月3日(月)~10月7日(金) 昼の部休診
夜の部(16:30~20:00)のみ診療
なお、昼の部はリハビリもお休みとなっておりますのでご了承願います。
☆次回の下肢外来は9月17日(土)です。
【ドクターのフォームチェック】
第1回「金子投手&高田投手」小樽シニア・岩見沢シニア所属
第2回「町田投手」西発寒ホークス所属
第3回「立野投手」真栄ビクトリー所属
第4回「大関投手」真栄ボーイズ所属
第5回「関根匤希」東ハリケーン所属
第6回「竹内快維」大栄クーガーズ所属
第7回「下重匡史」札幌北シニア所属
第8回は東札幌中央ビクトリーズ:渡辺佑汰投手、前回の下重投手のようなサイドスローに近いスリークォータースローです。変化球のない小学生が意図的に横から投げているとは考えにくいので、おそらく自然とスリークォーターになっているものと思われます。よくあることですが、もしかしたら本人はオーバースローで投げている感覚なのかもしれません。
セットポジションからの投球で、2コマ目から左足を上げ始めています。4コマ目で頭が本塁方向に流れ始め、5コマ目ではさらに上体ごと本塁方向に流れています。6コマ目がヒップファーストのタイミングですが、ヒップファーストというより左肩が下がって上体が本塁方向に突っ込んでしまう、俗に言う「ショルダーファースト」の状態になっています。
横回転のスリークォーターですからオーバースローほどではないにせよ、5コマ目から6コマ目で左肩が右肩よりわずかに上がり、三塁もしくは一塁方向から見た場合に先行する左のお尻が最も本塁方向に突き出た弓なりの状態になるべきです。渡辺投手の5、6コマ目と下重投手の4、5コマ目は投球のフェーズ(相)はほとんど一致していますが、上体の傾きが全く異なっています。
投球時に使われる体幹筋力には二種類あります。一つはいつも述べている上半身と下半身を捻る際に腹斜筋に蓄積される回旋エネルギーです。もう一つは右投手では左の体側が伸びて弓なりに反る際にお尻にある殿筋、脇腹にある肋間筋などに蓄積される伸張エネルギーです。これらの筋肉が同時に一気に縮むことにより、素早い軸回転と、定規を曲げて手を放したような上体の本塁方向への振り込み(縦回転とも呼ばれる)が同時に起こるのです(小学生なら定規で消しゴムの飛ばしっこをしたことがありますよね)。
渡辺投手の場合は頭から本塁方向へ突っ込むような形で重心移動することで位置エネルギーと回旋エネルギーを使って投げており、左体側の伸張エネルギーを使えていません。
この、伸張エネルギーを使った上体の振り込みは、横回転のサイドスロー、スリークォーターよりも縦回転の要素が大きいオーバースローでより明確となります。第1回:高田投手の3コマ目、第2回:町田投手の5コマ目、第5回:関根投手の4コマ目などを参考にしてください。
7コマ目ではグラブを上手く使って左肩の開きを抑えながら左足をステップしているので、7コマ目と8コマ目の間では上半身と下半身の捻りが出来ていることでしょう。
8コマ目でのアームスイングはスリークォーターですが、下重投手に比べると肘が下がっているためリストが利いています。これでは肘内側の靭帯に伸張力が加わってしまうので、故障の発生が心配です。
8コマ目以降のグラブの巻き取りはバッチリ、9コマ目から11コマ目までのフィニッシュもきれいで、右足が左足を踏み越しています。
投球の基本はオーバースローです。バックホームで横から投げるプロの外野手はいませんよね。右投手の場合、本塁方向から見て体軸が一塁方向に45度、腕が三塁方向に45度傾き、合計で90度、体軸に対して直角にアームスイングが行われます。高田投手のようにヒップファーストから上半身と下半身の捻転差を作ること、金子投手のようにきれいに上半身を回旋させ後ろ足を大きく跳ね上げること、などの基本的な動きを身に着けやすいのです。これらを身に着けた上で下重投手のようなサイドハンドやスリークォーターに転向する方が成功への近道です。個人差はありますが、中学1、2年生くらいまでは打者を抑えるという結果ばかりにこだわらず、オーバースローで基本技術を身に着けるべきでしょう。
最初にも述べましたが、恐らく渡辺投手は意図的に横から投げているのではなく彼の投げやすいフォームがスリークォーターなのでしょうから、あえてオーバースローに直す必要はありません。しかし基本は一緒です。ショルダーファーストと肘下がりの二つを修正することによって、中学ではさらに活躍できるはずです。頑張って下さい
協力:たきうち整形外科スポーツクリニック
写真:ベースボール北海道STRIKE