<よくある誤解>打撃動作編①
正しい身体の使い方の結論から言うと、バッティング動作での回転軸は踏み出した投手側の脚の付け根(股関節)になります。
その股関節を軸に腰(骨盤)が回るのですが、そこが軸になるには踏み出した脚がしっかりと固定される必要があり、そのためには、踏み出した脚に体重を乗せる必要があります。
踏み出した脚に体重が乗っている状態とは、逆に言えば、軸脚で体重を支えていないということです。
回転動作を行うときに、軸脚で体重を支えていないとどうなるのか、それは、軸脚の足の裏が地面から離れ、つま先の先端だけが地面に着いている状態になります。
これが、踏み出した脚に体重を移し、その付け根の股関節を軸に腰が回転した結果として現れる姿勢です。
決して軸脚の足の裏の親指の付け根で踏ん張ろうなどとはしていません。
細かく言えば、ステップをして踏み出した脚のつま先が地面に着いたときはまだ軸脚側に体重は乗っていますが、踏み出した脚のかかとが着いて完全に着地した瞬間に、体重は踏み出した脚に移り、その脚が固定されて支点となって、付け根の股関節を軸に腰が回ります。
そうすると軸脚の足は、まず内側に倒れていき、外側からめくれて足の裏が地面から離れ、親指の内側が地面に触れている状態を通過して、完全なつま先立ちへと移っていきます。
これは、軸脚の動きが腰の動きに引っ張られて起こっている証拠で、着地した直後に最初に動き出す場所は腰だということを意味しています。
よく、軸脚を回すことで腰の回転を強めるものだと誤解されていますが、順番が逆です。軸脚を回す動きが腰を回すのではなく、腰の回転に引っ張られて軸脚が回るのです。
軸脚の足の裏の親指の付け根を最後まで地面に着けたままでいることは、腰の回転に引っ張られる動きの逆になりますから、軸脚で踏ん張ろうとするほど、体重移動もできませんし、腰も回り切りません。
腰が回り切らなければ、バットを引き出す上半身の動きにも悪影響が出ます。
踏み出した脚に体重が乗って支点をつくり、その付け根の股関節が軸となってインパクトのときまでに腰が回り切ることで、体重が乗った強い打球が打てるのです。この話は次回に続きます。
◇前田 健 プロフィール
筑波大学大学院で体力トレーニング論を専攻後、日本石油野球部で9年間コンディショニングコーチを務める。2003年、当時監督の星野仙一氏入団要請され、阪神タイガース一軍トレーニングコーチに就任。同年、18年ぶりリーグ優勝に貢献した。
現在は野球選手個人とチームを対象に、ピッチング、バッティングの「動作指導」と「トレーニング指導」を行う「BCS Baseball Performance」(兵庫県芦屋市、埼玉県和光市)の代表として、日本全国の野球選手の活躍をサポートしている。
北海道には札幌のバッティングセンター「ピッチャーガエシ」(札幌市手稲区)に訪れ、マンツーマンの動作改善指導を行っている。