「インサイドアウト」
コラム「夢の実現へ」前田 健のQ&A<復刻>
ベースボール北海道ストライクの前身で2007年よりフリーペーパーとして発行した『熱球マガジンストライク』の人気コラム「夢の実現へ」前田 健のQ&Aを、紙からWEBに変え復刻し、11月1日より隔週木曜日掲載させていただくこととなりました。
Q)内からバットを出すのがいいと思って、息子にグリッ プの方からバットを出す練習をさせたのですが、かえっ て打てなくなってしまいました。何が悪いのでしょうか
A)「インサイドアウト」のスイングを覚えさせようとしたんですね。
よく誤解して間違った努力をしてしまいがちな落とし穴です。
おそらく息子さんは、腰を回さずに、グリップだけを前に出す振り出しからスイングしているはずで す。
本来、バットはテイクバックの「トップ」と言われる状態から、踏み込んだ足の股関節を軸に腰が回転することで、その腰の回転に引き出されて前に出ていきます。
そして、腰が回り切るだけで、グリップエンドが投手を、ヘッドが捕手を指すところまで引き出され、そのまま 腕が伸び、続いて手首が返るという 順番で体が動いてスイングとなります。
「インサイドアウト」のスイングとは、このように腰の回転に上半身の回転が遅れて引き出される使い方ができたときに、グリップが 「トップ」の位置から投手方向に向かって直線的に移動することを指しています。
ところが、息子さんが 練習している振り方は、腰の回転より先にグリップの位置を前に動かしているのですから完全な「手打ち」です。
さらに、このようにグリップだけを前に動かしていくときには、手首とバットでできる角度は鋭角に狭まっていき、そこからのスイングはほとんど手首だけで行われることになるので、打球はすごく弱いはずです。
力の無い選手なら、インパクトの瞬間にボールの衝撃にバットが押し戻されるでしょう。
また、手首の角度が鋭角になるほどグリップは小指と薬指が緩みやすく、それは ヘッドが下がって右打者なら一塁方向の、左打者なら三塁方向のファウルフライが増える原因になります。
構え方は個人個人いろいろでも、着地したときのテイクバックの「トップ」では、グリップは捕手側の肩に最も近づいて、バットはその位置で寝ている必要があります。
その「トップ」の姿勢から、着地した瞬間に腰が回転することでスイング が始動しますが、「トップ」でつくっている手首とバットの約 90 度の角度は腰の回転が終わるまでほとんど変わることはありません。
腰の回転に続く『水平チョップ』のよう な投手側の腕のリードで、バットは ミートポイントまで遠回りせずに 出ていきます。
◇前田 健 プロフィール
筑波大学大学院で体力トレーニング論を専攻後、日本石油野球部で9年間コンディショニングコーチを務める。2003年、当時監督の星野仙一氏入団要請され、阪神タイガース一軍トレーニングコーチに就任。同年、18年ぶりリーグ優勝に貢献した。
現在は野球選手個人とチームを対象に、ピッチング、バッティングの「動作指導」と「トレーニング指導」を行う「BCS Baseball Performance」(兵庫県芦屋市、埼玉県和光市)の代表として、日本全国の野球選手の活躍をサポートしている。
北海道には札幌のバッティングセンター「ピッチャーガエシ」(札幌市手稲区)に訪れ、マンツーマンの動作改善指導を行っている。