運動と成長
運動と成長についてお話しする前に、まず正常な成長パターンと成長メカニズムについて説明します。
生まれたばかりの赤ちゃんの身長は約50㎝ですが、1歳までに25㎝、2歳までに10㎝、3歳までに㎝、4歳までに7㎝伸びて約100㎝になります。
それ以降の年間の伸び率は6㎝前後でゆっくりと低下し、思春期前に最低となって、その後思春期の急激な成長スパートが始まって最終身長にいたります。
身長は骨の両端にある成長軟骨が増殖して骨に変わりながら伸びます。
この成長軟骨の増殖に最も大切なのが、成長ホルモン(GH)が軟骨や肝臓の細胞に働いて合成されるIGF-1という成長因子です。
GHはたんぱく質から筋肉を作るときにも重要な役割を担っています。
GHは1日に数回分泌のピークがありますが、思春期前のこどもでは深い睡眠中に最もピークが訪れます。
したがって十分な睡眠は成長にとってとても重要です。
思春期になると覚醒中にも大きなピークがみられ、1日に分泌されるGH、IGF-1が増加し性ホルモンも加わって成長スパートを引き起こします。
適度な運動は細胞の働きを活発にしてGHの分泌を促します。また体を動かして骨にリズミカルな圧力がかかると、成長軟骨の増殖が促進されます。
一方、激しい、長時間の運動はGH分泌を低下させGHの働きが細胞に伝わりづらくなります。
またストレスホルモンであるコルチゾールの分泌促進、軟骨細胞の損傷や増殖の抑制を引き起こして成長を妨げると考えられています。
1週間あたり15〜18時間を超える練習が長期間続くと最終身長が低くなるというデーターもあります。
したがって成長期のこどもでは、自分の体重以上の負荷をかけて過度に筋肉や骨を強化するトレーニングよりも、敏捷性やリズム感を養うようなスポーツを楽しみながら行うのが望ましいと考えられています。野球は成長にとても適したスポーツといえます。
母坪 智行 先生
昭和61年札幌医科大学医学部卒業。
札幌医科大学小児科助手を経て、現在医療法人さっぽろ小児内分泌クリニック院長。
専門は小児内分泌疾患。