伝統と挑戦を胸に――札幌北リトルシニア、全国の舞台へ再び挑む

札幌北リトルシニア
伝統と挑戦を胸に――札幌北リトルシニア、全国の舞台へ再び挑む
北海道中学硬式野球界で最も長い歴史を持つ札幌北リトルシニア。
1973年に東亜ライラックとして創設されて以来、幾度もの変遷を経て、現在の札幌北球団として半世紀にわたり歴史を紡いできた。
2月24日、その伝統あるチームを取材訪問した。
昨夏の「林和男杯」全国大会出場に続き、秋季全道大会では準優勝と躍動。
今春、3月25日から大阪で開幕する第31回全国選抜野球大会に北海道代表として臨む新チームは、さらなる飛躍を誓っている。
攻守における課題、スローガンに込めた思い、監督の指導方針、そして10項目によるチーム分析から見える札幌北リトルシニアの現在地と可能性に迫る。
★現在、チーム訪問先募集中です!
お問い合わせは大川まで(090-1524-0465)(strikepro.oh@gmail.com)

走り込みをする投手陣(札幌北)

基礎練習にもしっかり時間を割く札幌北ナイン
<活動>
平日:水・木曜日(17:30~21:00)
土日:9:00~16:00
<選手構成>
3年生:7人
2年生:22人
1年生:22人
6年生:11人
(2025年3月12日現在)
<オープン戦>
3月)
16日:(日高遠征)日高、北空知深川
4月)
6日:(日高遠征)小樽、日高
<卒団生・注目進路>
とわの森、北星大附、札幌日大、札幌創成、小樽双葉、クラーク記念国際。
他は公立受験。
<卒団した3年生へのメッセージ>
-松本監督からメッセージ-
いよいよ高校野球生活の3年間が始まります。
それぞれの目標に向かって精一杯の頑張りで輝かしい華が咲くことを楽しみにしております。
<OBの活躍>
甲子園を懸けた全道大会で札幌北球団出身でベンチ入りを果たした選手は下記の通り紹介致します。
-夏の甲子園を懸けた-
第106回全国高校野球選手権南北海道大会
<札幌光星>
片山 正進(3年)
<札幌第一>
樋口 優弥(2年)
黒沢 怜生(2年)

投手(札幌北)
新チームが目指す次のステージ――攻守における課題と強化ポイント
【攻撃面】
① 100%確実に進塁させる送りバントを徹底させること。
試合展開を有利に進めるためには、確実に走者を進める送りバントの技術が必要不可欠である。
状況に応じたバントの選択や構え、確実に転がす技術を全員が習得し、どんな場面でも100%の成功を目指すことが重要となる。
チームとしての共通認識を持ち、実戦で迷いなく実行できるよう、練習から意識して取り組んでいきたい。
得点圏に走者を置いた際、確実に1点をもぎ取るためには、打撃だけでなく走塁技術と判断力も求められる。
打球判断、スタートのタイミング、相手守備の隙を突く意識など、細かい部分の積み重ねが得点力に直結する。
常に1点を奪いにいく姿勢と、それを可能にする走塁技術の向上が、チーム力を大きく左右する。

冬季練習に励む札幌北ナイン
【守備面】
① 取られる1点をどれだけ防げるか。
守備の目的は「ゼロに抑える」ことだが、現実的には「最小失点で切り抜ける」技術と判断が求められる。
特に終盤の僅差の展開では、1点の重みが増すため、その1点をいかにして防げるかが勝敗を左右する。
ミスを減らすことはもちろん、味方同士の声掛けやポジショニングの工夫など、守備全体で粘り強く守り抜く力を養っていきたい。
② 確実に進塁される場面を、進塁させずに1つのアウトを取る技術のレベルアップ。
例えば無死または一死のランナー二塁、三塁といった場面で、当たり前のように進塁を許してしまうのではなく、守備側が一工夫することでアウトを奪える可能性もある。
ゴロ処理や中継プレー、バックホームのタイミングなど、状況に応じた守備対応力を磨き、「進塁されて当然」のプレーを「アウトに変える」守備技術の習得を目指したい。

捕手(札幌北)

内野手(札幌北)
すべては基本から――チームスローガン「凡事徹底」に込めた想い
【チームスローガン】
「凡事徹底」
野球において大切なのは、特別なことではなく、当たり前のことをどれだけ確実に積み重ねられるかということです。
挨拶や返事、道具の整理整頓、キャッチボールの正確さ、走塁や守備の基本動作など、すべての土台は“凡事”にあります。
これらをどんな時でも丁寧に、徹底して取り組むことが、最終的にチームの力となり、勝利につながると信じています。
全員で「凡事徹底」を実践していきます。

外野手(札幌北)
伝統と革新の融合――監督としての指導方針
「昔ながらの大切なことを継承し、徹底して継続する力を養いつつ、新しい物事を積極的に取り入れ、日々進化し変化していくこと」――これが松本監督が指導者として常に心がけている指導方針である。
野球の世界において、礼儀・基本・継続といった“当たり前”の土台は、時代が変わっても変わることのない普遍的な価値を持つ。
挨拶や道具を大切に扱う心、基礎を疎かにしない姿勢は、人間形成にもつながる重要な要素であり、これらをしっかりと選手たちに伝えていくことは、指導者としての責任だと考えている。
一方で、野球を取り巻く環境や考え方は日々進化しており、新たなトレーニング法やデータ分析、思考力を養う指導など、現代だからこそ取り入れるべき要素も多い。
昔ながらの良さを大切にしながらも、常に新しいものに目を向け、柔軟に取り入れていくことで、選手たちの可能性をさらに広げていきたいと考えている。
伝統と革新。
その両輪を大切にしながら、これからも選手たちと共に成長し続けるチームづくりを目指していく。

新入団員の6年生(札幌北)
札幌北リトルシニアの現状と課題――松本監督が語る10項目評価
厳しい北海道の冬を乗り越え、春の開幕に向けて成長を続けている。
松本監督による10項目の評価では、チームの強みと今後の課題が浮き彫りになった。
特に、選手層の厚さ(層力)は高く評価され、誰がレギュラーになってもおかしくない激しい競争が繰り広げられている。
一方で、精神力やチームワーク力、勝負力といった部分はまだ発展途上であり、春の開幕までにどこまで成長できるかが鍵となる。
ここでは、各項目について監督の評価をもとに詳しく見ていく。

マシン打ちに励む札幌北ナイン
【札幌北リトルシニア 10項目評価】
攻撃力:4
▶ 長打は比較的少なく、打線をつなぐことが重要。
「水鉄砲打線」として、コツコツと打点をつなげる形が理想。
状況に応じたバッティングを徹底し、2アウトからでもしぶとくヒットを打って得点できる選手の出現が期待される。
機動力:4
▶ 単純な足の速さよりも「観察力」と「判断力」がカギ。
チーム全体の走力は北海道内で30位程度だが、足で塁を盗むだけでなく、相手の隙を「背中で感じ、眼で盗む」ことができれば得点力はさらに向上する。
守備力:5
▶ 鉄壁の守備とは言えないが、バックアップの徹底がポイント。
連続ミスを防ぐために、状況判断とサポート意識を高めることが重要。
特に、1点を取られそうな場面で、無失点に抑えられる選手の存在がチームの勝敗を左右する。
投手力:5
▶ 3年生投手5人に加え、2年生投手が成長中。
今後の経験値アップが最大の課題。
ピンチでも野手陣を引っ張り、冷静に相手打者と対峙できる投手の登場が期待される。
層力(選手層の厚さ):8
▶ 「レギュラーがわからない」と言われるほどの充実ぶり。
平均レベルが高く、誰が試合に出ても安定したプレーができる状態。
さらに競争を激化させ、チーム全体の底上げを図りたい。
精神力:3
▶ 苦しい試合を勝ち切る経験が不足。
大事な場面での粘り強さを身につけることが必要。
夏の選手権大会までに厳しい試合を経験し、勝負所での強さを養いたい。
チームワーク力:3
▶ 競争が激しい分、現時点では未知数。
最後の夏に向けて、チームとしての一体感をどこまで高められるかが課題。
最終的に「チームワーク力10」になることを期待している。
勝負力:3
▶ 勝負に徹する意識がまだ足りない。
最後の夏に向けて、3年生がどれだけ「勝ちたい」という思いを強く持てるかが重要になる。
適応力:5
▶ 試合中の観察力が少しずつ向上。
ゲームの流れを理解し、柔軟に対応できる力が求められる。
どこまで試合の中で体現できるかがポイント。
戦略力:5
▶ サイン通りのプレーは当然。その先を考える力を養う。
現在の戦略レベルは30点。
サインを遂行するだけでなく、1点を確実に取るための戦略をチーム全体で共有できれば100点に近づく。
総合評価:45
鍵を握るのはどんな選手か?
チームを引き上げる選手の台頭が、今後の成長に不可欠である。
監督は、以下のような選手の出現を期待している。
攻撃力:2アウト2塁・3塁から、しぶとくヒットを打ち、1点をもぎ取る選手。
機動力:2アウト2塁から、確実にホームへ帰ってこられる選手。
守備力:1点を取られそうな場面を無失点で切り抜ける判断とプレーができる選手。
投手力:ピンチでも冷静に野手を鼓舞し、相手打者としっかり勝負できる投手。
精神力:どんな時でもチームを鼓舞し続ける選手、また全力で応援できる選手。
そして、最後までチームを支える応援団の力も欠かせない。

羽打ちをする札幌北ナイン

打ち込みを繰り返す6年生(札幌北)
夏に向けて――さらなる成長へ
現在の評価を踏まえ、札幌北リトルシニアが夏の選手権大会でどこまで進化できるかが大きな焦点となる。
激しい競争を経て、勝負強さを手にしたチームが、最後の夏にどんな戦いを見せるのか――期待が高まる。

北海道選抜に選出された今野(札幌北)
《今シーズンに向けた意気込み》――本気の本気の本気で日本選手権切符を掴みにいく
3年生最後の夏、選手権大会に向けて、どれだけの準備、成果、自信を持って大会に臨めるかが重要だと感じています。
また、全国選抜大会での試合経験も、夏へ向けた大きなカギになると思っています。
夏の選手権大会で、選手全員が思う存分その力を発揮できるよう、全力で尽力していきたいと考えています。
本気の本気の本気で日本選手権切符を取りに行きます。

ロングティを繰り返した札幌北ナイン
夢を諦めない—ケガと向き合う阿知良梓佑の挑戦 「中学最後の夏、130キロのストレートを目指す」
キャプテン合田&藤井くん
2人制主将が語る札幌北球団の今と未来――全国制覇へ、チームの強みと覚悟
札幌北球団では今シーズン、2年生の合田翔選手(東グレートキングス出身)と藤井直樹選手(スターキングス出身)が主将を務める“ダブルキャプテン制”を採用。
それぞれ異なる持ち味を持つ2人が、チームを牽引している。
粘り強い守備と全力プレーを武器に、全国選抜大会、そして夏の選手権大会出場へ挑む札幌北。
2人の主将に、チームの強みや自身の成長、キーマンとなる選手、そして今シーズンへの意気込みを語ってもらった。
〇合田 翔(ごうだ しょう)
2年・東グレートキングス出身
右投げ、右打ち
170センチ、59キロ
〇藤井 直樹(ふじい なおき)
2年・スターキングス出身
右投げ、右打ち
174センチ、72キロ

主将二人制の札幌北。写真左から藤井、合田
-合田主将に質問-
Q1)チームの強みは?
投手力、守備力、最後まで諦めない心、全力ダッシュ。
Q2)チームの強みが発揮できた試合は?
秋季全道大会(新人戦)
札幌新琴似リトルシニア戦。
劣勢の場面でも諦めることなく、最後まで粘り強く戦い抜いた結果、勝利を収めることができました。
そして試合終盤には、チームの持ち味である守備力が発揮され、集中力を切らさずに守り切ったことで、勝利を手繰り寄せることができました。
Q3)自分の強みは?
肩の強さ、ミート力。
Q4)自分の強みが発揮できた試合は?
秋季全道大会(新人戦)
札幌大谷リトルシニア戦
2安打2打点に加え、盗塁3と持ち味の足とミート力を生かすことができた。
Q5)今シーズンカギになる選手は?
今野汰星(2年・篠路ライオンズ出身)。
Q6)またQ5の理由は?
長打力と守備の安定感。
Q7)今シーズンに向けた意気込みを!
全国制覇。
-藤井主将に質問-
Q1)チームの強みは?
堅実な守備、全力疾走。
Q2)チームの強みが発揮できた試合は?
秋季全道大会(新人戦)
札幌新琴似リトルシニア戦。
Q3)自分の強みは?
長打力。
Q4)自分の強みが発揮できた試合は?
秋季全道大会(新人戦)
札幌大谷リトルシニア戦で3打数3安打の活躍を見せた。
Q5)今シーズンカギになる選手は?
作間健斗(2年・白菊ファイターズ出身)。
Q6)またQ5の理由は?
1番いい場面で打てるところ。
Q7)今シーズンに向けた意気込みを!
全国制覇。

冬季練習に励む札幌北ナイン
<スイングスピード測ってみた>
例年行っている人気企画、選手のスイングスピードを競い合う企画です。
使用されるバットは、今までと変わらず長さ83センチ、重さ800グラムという中学硬式用バットを使ってスイングスピードに挑戦しました。

スイングスピード測ってみた!に挑戦した札幌北ナイン
★第1位 140キロ
〇合田 翔(ごうだ しょう)
2年・東グレートキングス出身
右投げ、右打ち
170センチ、59キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
北海高等学校
★第2位 136キロ
〇近藤 健翔(こんどう けんと)
1年・前田リトル出身
右投げ、右打ち
171センチ、79キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
東海大学附属札幌高等学校
★第3位 134キロ
〇藤田 桃成(ふじた とうせい)
1年・緑苑台ファイターズJr.出身
右投げ、右打ち
170センチ、67キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
北海道札幌国際情報高等学校

スイングスピード測ってみた!写真は左から近藤、合田、藤田(札幌北)
<発行人>
すべてはここから始まった――中学硬式野球の礎を築いた札幌北球団と創設者・梶浦正治氏の功績
リトルシニア北海道連盟のみならず、他団体を含めた中学硬式野球の“原点”とも言える存在が「札幌北球団」である。
1973年、現・札幌北球団は東亜ライラックとして創設され、北海道の硬式野球界にその第一歩を刻んだ。
その立ち上げを担ったのが、創設者・梶浦正治氏である。
草創期には、バッファローズ、葵エンペラーズ、ミキアンズの3チームとともに、たった4チームで北海道連盟を発足。
競技環境も未整備な中、梶浦氏は先頭に立って道を切り開いた。
リトルリーグを含めた東北地区との定期交流戦を実現し、さらには創設わずか3年目で全国大会を北海道へ誘致するという快挙も成し遂げた。
これらは、まだ中学硬式野球の認知度すら低かった時代において、未来を見据えた大きな一歩だった。
大会の新設、スポンサーや協賛企業の獲得にも尽力し、単なるチーム運営にとどまらず、北海道連盟全体の発展と普及に身を捧げた。
梶浦氏が築いた礎がなければ、今の北海道中学硬式野球の隆盛はなかったと言っても過言ではない。
現在、札幌北球団は50年を超える歴史を誇り、なおも挑戦を続けている。
その背景には、先駆者が味わった苦労と情熱、そして「野球を通じて子どもたちを育てたい」という揺るぎない想いがある。
私たちは今、当たり前にある環境に感謝するとともに、その礎を築いた先人たちに深く敬意を払いたい。
すべては、この札幌北球団から始まったのである。
(参考文献・日本リトルシニア中学硬式野球協会北海道連盟AMBITIOUS創立50周年記念誌より)

雪中での連携練習を繰り返す札幌北ナイン