逆境を越えて、選手の未来へ――森監督が見据える“育成の本質”とは

とかち帯広リトルシニア
逆境を越えて、選手の未来へ――森監督が見据える“育成の本質”とは
とかち帯広リトルシニアは、施設の立ち退きという難局を経て、新たな拠点で再スタートを切った。
そこには、指導者・森徹監督の「技術より心、人間力を育てたい」という強い信念がある。
現代のトレンドとも言える“自主性”についても、「放任ではなく、考えるための土台が必要」と語る森監督。
自身の後悔から導き出した指導の原点には、未来を見据えた深い想いが込められていた――。
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フリーバッティングの様子(とかち帯広)
「日本選手権に執着したい」――とかち帯広リトルシニア、41年目の挑戦始まる
十勝の芽室町で、中学硬式野球のとかち帯広リトルシニアが3月16日、冬季練習に励む様子を取材した。
同チームは1984年(昭和59年)に創部し、今シーズンで41年の歴史を刻む。
昨年、埼玉県で行われた第13回東日本選抜大会に出場し、1回戦での勝利は記録にも記憶にも残るゲームとなった。
3年生3人が主導となり、下級生を含めたチーム全体で結束して挑んだ末に掴んだ価値ある一勝だった。
新チームは秋季全道大会・予選リーグを4勝1敗1分で2位通過し、決勝トーナメントへ進出。
1回戦では札幌東リトルシニアに5-2で勝利し、迎えた2回戦では札幌新琴似との接戦の末、惜しくも3-4で敗れた。
森 徹監督は「今シーズンは日本選手権大会に勝つということに執着したい!」と力強く語る。
チームはすでに冬季練習を通して、フィジカル強化や基礎技術の見直しに力を入れている。
春の戦いに向け、ひと冬を乗り越えたチームの進化に期待が高まる。

フリーバッティングの様子(とかち帯広)

ピッチングの様子(とかち帯広)
<活動>
平日:火曜日(新2、3年)、水曜日(新1年)、木曜日(全学年)※練習時間は共通になります。(18時~21時)
土日:8:30~15:00(全体練習)
<選手構成>
新3年生:7人
新2年生:11人
新1年生:13人
(2025年3月27日現在)

ティバッティングの様子(とかち帯広)
<オープン戦>
3月)
22、23日:(日高)日高、札幌中央
4月)
5日:(洞爺湖)洞爺湖、札幌中央
6日:(札幌大谷G)札幌大谷
13日:(帯広農業G)札幌北広島ボーイズ
19日:(深川市営)北空知深川
<3年生注目進路>
とわの森、札幌山の手、帯広農業。
<卒団した3年生へのメッセージ>
-森監督からメッセージ-
人数の少ない学年で苦労も多くありましたが、3年生3人が中心となって頑張ったおかげで、東日本大会への出場、そして初戦の勝利につながりました。
この貴重な経験を糧に、高校野球でも活躍してほしいと思います。

投手(とかち帯広)
<OBの活躍>
甲子園を懸けた全道大会でとかち帯広リトルシニア出身でベンチ入りを果たした選手は下記の通り紹介致します。
-夏の甲子園を懸けた-
第106回全国高校野球選手権北北海道大会
<白樺学園>
川島 陽琉(2年)
第106回全国高校野球選手権西東京都大会
<創価>
平井 勇征(1年)
第106回全国高校野球選手権茨城県大会
<明秀日立>
能戸 輝夢(2年)
※主将
-春のセンバツ甲子園を懸けた-
第77回秋季北海道高等学校野球大会(新人戦)
<東海大札幌>
砂田 左漸(1年)
※2025センバツ甲子園大会ベンチ入り果たす。

捕手(とかち帯広)
「とかち帯広リトルシニア」――難局を乗り越えて
二年前の10月、帯広市から一本の通達が届いた。
それは、当時チームが使用していた後楽園球場が、遊歩道建設のため立ち退きの対象となるという内容だった。
長年にわたりチームの拠点として利用してきた球場であり、森監督はあらゆる人脈を駆使して帯広市側に何度も懇願を重ねたが、立ち退きの決定が覆ることはなかった。
球場に隣接していた立派な室内練習場も、数年前に建設したばかりのものだったが、すべて解体することとなった。
フェンスをはじめとする各種設備も撤去し、更地にして帯広市へ返却したのは、2024年5月のことだった。
その撤去・解体にかかった費用は相当な額にのぼったが、これらの費用の多くは、森監督が自らの私財を投じて賄ったという。
チームにとっても、森監督にとっても、まさに大きな難局であった。
しかし、森監督は決して立ち止まらなかった。すぐにインターネットで空き倉庫を探し、たどり着いたのが、現在の練習拠点である芽室町の倉庫だった。
偶然にも、その貸主が森監督と同業者だったことに加え、中学生を対象に行っている森監督の取り組みに共感していただけたこともあり、格安で倉庫を借りることができた。
この出会いもまた、森監督の人徳のなせる業だろう。
新たな練習場となったこの建物は高さがあり、縦96メートル、横15メートルの縦長構造。
内部は中間に仕切りを設け、守備練習ができるスペースとバッティング練習ができるスペースをしっかりと確保している。
ネットや鉄パイプなどの設備は、以前の後楽園球場で使用していたものを再利用して整備された
十勝地域は全国的に見ると降雪量は少ない方だが、それでも冬季(12月〜3月)は積雪30〜60センチ程度が平均である。
今年2月には、半日で120センチを超えるエリアもあった。
さらに、雲が少ない地域特性により放射冷却が強く、気温が非常に低くなる。
こうした過酷な気候環境の中でも、この室内練習場には断熱材が施されており、冬季でも快適な環境でトレーニングを行うことができている。

内野手(とかち帯広)
「自主性」とは何か――とかち帯広リトルシニア・森 徹監督が語る指導の本質
「今、どこへ行っても“自主性を大事に”という言葉をよく聞きますよね。でも、本当にそれが選手たちの成長につながっているのか。私は少し疑問なんです」
そう語ってくれたのは、とかち帯広リトルシニアの森 徹監督。
選手たちと日々向き合う現場の視点から、いま話題の“自主性”について本音を語ってくれた。
「自主性というのは、何でも好き勝手にやっていいという“放任”とはまったく違います。ある一定のルールや指針があってこそ、その中で考え、動く力が“自主性”だと思っています」
森監督は、現場で“自主性=放任”と勘違されるケースが増えていることに危機感を抱いている。
「『声を出すも出さないも自由』『練習メニューも自分たちで考えろ』といったスタイルが一部で見られますが、それは指導者が責任を放棄しているだけにも見えるんです。
本当に自主性を育てたいなら、選手が“どう考えるか”“どの方向へ向かうか”を示すのが大人の役目だと思っています」
選手たちに“考える力”を育てたいという思いは、森監督自身にもある。
だからこそ、あえて“指示しすぎない”場面もあるという。
ただし、それはあくまで考えるための“土台”が整っていることが前提だ。
「何の指針もないまま“自由にやれ”と言っても、経験の浅い選手たちはただ戸惑うだけ。まずはベースをつくってあげることが、我々大人の役割だと思います。ルールや型があるからこそ、その中での“自由”が本当の意味を持つんです」
「自由には責任が伴う」という言葉はよく聞くが、まさにその通りだ。
森監督の言葉からは、選手たちの未来を見据えた深い想いが伝わってくる。
「本当の自主性とは、“自ら考えて行動し、その結果に責任を持つ力”。それができる選手こそ、次のステージでも必ず通用する選手になるはずです」
若い世代と向き合う指導者だからこそ語れる“自主性”の本質。
そこには、選手の成長を第一に考える森監督の揺るがぬ信念があった。

森監督(とかち帯広)
“自主性”の本質とは何か
森監督が語る、失敗から学んだ指導者としての原点
森監督がこの考えに至るまでには紆余曲折あったが、そんなエピソードを一つ。
監督就任一年目の事です、当時は今とは真逆で選手には褒めて育てようと言う思いから、失敗しても次頑張ろうと指導していた。
当時のキャプテンA君は真面目で責任感もあり一生懸命。
自慢の選手の一人でした。
地元の強豪校はもちろん、他の私学からも引く手アマ手の状態でしたが地元の私学に進路を決めました。
すると一年目、私学の雰囲気や厳しさから野球部を退部、のちに高校自体も辞めてしまった。
高校を辞めた後、アルバイト先のラーメン屋に逢いに行った。
あの時のようにまた、とかち帯広の後輩たちのために手伝ってくれと何度か誘ったところ何回かは来てくれたが、野球以外に楽しさを見つけた為に最近は姿を見せなくなった。
森監督は「こうなったのもの俺の責任」と語る。
あの時もっと厳しく指導しておけばと後悔の念にかられる。
当時、どこか放任のところがあったのかもしれない。
やはり、高校野球に通用する技術だけではなく心の教育も必要だと感じたからだ。
これは森監督の実体験によるものであり、現在の指導方針の大きな転換点となった出来事でもある。
技術はもちろん大事です。でも、それ以上に“人としての土台”を育てることが何よりも大切だと、あのとき痛感したからだ。高校野球は通過点。
野球だけがうまくても、社会に出たときに踏ん張れる心がなければ意味がない。
だから今は、グラウンドの中だけでなく、挨拶や礼儀、仲間との接し方まで含めて“人間力”を育てる指導を心がけている。
ただ甘やかすのではなく、ただ厳しくするのでもなく――。
「自主性」とは、その中間にある“自分で考えて行動する力”であるということに、森監督はたどり着いた。
「今の子たちは昔よりも真面目。でも、どこか“自分で考える”ことに不慣れな部分がある。だからこそ、こちらがその“考えるきっかけ”を与えてあげることが大切なんです。土台を整えてから、その上に自由な発想を乗せていく。それが本当の自主性だと」と森監督は自らの経験で得た答えを示してくれた。
失敗と後悔から得た学びを胸に、森監督は今日も選手たちと向き合う。
そのまなざしの先には、ただ野球が上手な選手ではなく、人として成長した“次の世代”が確かに映っている。

外野手(とかち帯広)
チームスローガン:「全力プレーで限界突破」
とかち帯広リトルシニアが今シーズン掲げるスローガンは――「全力プレーで限界突破」。
この言葉には、ただ全力でプレーするだけではなく、日々の練習や試合の中で自分自身の壁を乗り越え、成長を続けていこうという強い想いが込められている。
全力を尽くすことは、技術だけでなく、声、姿勢、走塁、守備、すべてにおいて手を抜かず取り組むということ。
そして、その積み重ねの先にこそ、今までの自分の限界を超える瞬間がある。
「昨日の自分を超える」「チームとして、もう一段階上へ進む」――選手一人ひとりがその意識を持って日々グラウンドに立っている。
全力プレーは、誰にでもできることではない。
だからこそ、それを“当たり前”にできるチームが、最後に勝ち上がっていく。
限界を自ら決めず、挑戦し続ける――そんな姿勢が、今のとかち帯広リトルシニアには確かに息づいている。

新入団員の6年生(とかち帯広)
森監督が語るチーム力――10項目・10段階評価で見るとかち帯広リトルシニアの現在地
日本選手権出場を目指し、力強く歩みを進めるとかち帯広リトルシニア。森 徹監督に、チームの特徴を10項目・10段階で評価してもらった。
攻撃・守備・投手力だけでなく、精神面や適応力、戦略面まで多角的に分析。
選手たち一人ひとりの個性が光る評価内容から、今シーズンのチームの実力と課題、そして可能性が浮かび上がってきた。
攻撃力:5
昨秋、2番・3番打者および中堅手を担った小瀬 遙(新3年・下音更ガッツ野球少年団出身)は、打席での積極性に加え、勝負強さとスイングの力強さを兼ね備えた選手。
パンチ力と長打力もあり、攻撃の軸となる存在だ。
北海道選抜にも選出され、さらに自信を深めた様子がうかがえる。
機動力:7
2番・3番・5番打者および捕手を務めた小畑 玄兎(新3年・音更ビッグスターズ出身)は、積極的な走塁が持ち味で、チームの機動力のカギを握る存在だ。
札幌中央リトルシニア戦では、ホームスチールを成功させるなど、思い切りの良さも光った。
守備力:7
下位打線で二塁手兼遊撃手を務めた杉本 朔弥(新2年・新得町野球少年団出身)は、小柄ながら守備範囲が広く、何よりもガッツあふれるプレーでナインに勇気を与える存在だ。
投手力:6
投手兼遊撃手兼二塁手を務めた山田 岳(新2年・柳町イーグルス出身)は、コントロールに優れ、試合を組み立てることができる頼もしい新2年生だ。
昨秋は変化球を使わず、ストレート一本でテンポよく打ち取り、守備陣も守りやすい投球を見せた。
精神力:7
主将の白濱 大知(新3年・音更ビッグスターズ出身)が、チームを牽引する存在だ。
真面目で一生懸命な性格が持ち味だが、そのぶん何事も自分一人で背負い込もうとする傾向もある。
今後は、副主将など周囲をもっと頼ることで、さらに一段上のリーダーへと成長してほしい選手だ。
昨秋は5番・6番を打ち、内外野を難なくこなすユーティリティープレイヤーとしても活躍した。
適応力:7
リトルシニアでは、時に土砂降りの中でも試合が行われることがある。
そうした状況を想定し、チームでは雨天時の練習も積極的に実施している。
濡れたボールでのキャッチボールなど、実戦さながらの環境での練習を通じて、あらゆる状況に対応できる力を養っている。
層 力:8
チームワーク力:7
勝負力:7
戦略力:7
総合評価:68

森監督の話に耳を傾けるとかち帯広ナイン
夢を諦めない—ケガと向き合う阿知良梓佑の挑戦 「中学最後の夏、130キロのストレートを目指す」
キャプテン白濱くん
「声でチームを引っ張る男」白濱大知が目指す“とかち日本一”への道
新チームの中心選手として、声とリーダーシップでチームを支える白濱大知(新3年・音更ビッグスターズ出身)。
秋季全道大会では、試合中に自ら率先して声を出し、仲間を鼓舞する姿が印象的だった。
機動力を武器とする「とかち」は、日本一を目指してこの春さらに進化を遂げる。
チームの雰囲気を変える存在として期待される白濱が、今シーズンに懸ける思いとは──。
〇白濱 大知(しらはま だいち)
新3年・音更ビッグスターズ出身
右投げ、右打ち
166センチ、60キロ

白濱主将(とかち帯広)
Q1)チームの強みは?
機動力。
Q2)チームの強みが発揮できた試合は?
-秋季全道大会・札幌新琴似戦-
負けはしたが、ダブルスチールやセーフティスクイズなど普段練習していたことが本番でできたこと。
Q3)自分の強みは?
思ったことを言葉にしてみんなに伝えることができること。
Q4)自分の強みが発揮できた試合は?
-秋季全道大会・全般-
試合中に少し雰囲気が悪いと感じたときは、自分が率先して声を出し、チームを引っ張ることができた。
Q5)今シーズンカギになる選手は?
小瀬 遙(新3年・下音更ガッツ野球スポーツ少年団出身)
Q6)またQ5の理由は?
遙が打てば、チームの雰囲気が良くなり、勢いがつくから。
Q7)今シーズンに向けた意気込みを!
一人ひとりがしっかりと考え、チームの目標である「とかち」が日本一を達成できるように頑張ります!

守備練習の様子(とかち帯広)

守備練習の様子(とかち帯広)
<スイングスピード測ってみた>
例年行っている人気企画、選手のスイングスピードを競い合う企画です。
使用されるバットは、今までと変わらず長さ83センチ、重さ800グラムという中学硬式用バットを使ってスイングスピードに挑戦しました。

スイングスピード測ってみた!に挑戦したとかち帯広ナイン
★第1位 132キロ
〇小瀬 遙(こせ はる)
新3年・下音更ガッツ野球スポーツ少年団出身
右投げ、右打ち
174センチ、67キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
札幌大谷高等学校
★第2位 124キロ
〇菊池 春馬(きくち はるま)
2年・出身
右投げ、右打ち
センチ、キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
北海高等学校
★第3位 121キロ
〇白濱 大知(しらはま だいち)
新3年・音更ビッグスターズ出身
右投げ、右打ち
166センチ、60キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
東海大学附属札幌高等学校
★第3位 121キロ
〇山田 朔太郎(やまだ さくたろう)
新2年・若葉野球少年団出身
右投げ、右打ち
173センチ、70キロ
Q)着てみたい道内の高校野球のユニフォームは
北海高等学校

スイングスピード測ってみた!写真左から菊地、小瀬、白濱、山田(とかち帯広)
<発行人>
「技術よりも心を燃やせ」――とかち帯広リトルシニア・森監督が貫く“我武者羅”の指導哲学
指導において何より大切にしていることは――「最後は、我武者羅に頑張ること」。
これは、とかち帯広リトルシニア・森徹監督の一貫した指導哲学だ。
もちろん、技術や戦術の向上は野球において欠かせない要素だ。
だが、それだけでは勝ち切れないのが勝負の世界。
思い通りにいかない場面でこそ、本当の力が問われる。
そんなとき、頭ではなく体が自然に反応し、前へ踏み出せるのは、日々の積み重ねと「絶対に負けたくない」という気持ちが心の奥にあるからだ。
全員が“我武者羅”にプレーする姿は、時にどんなテクニックよりも強いチームの原動力となる。
泥くさくてもいい。
カッコ悪くてもいい。
最後の1球、1プレーまで全力でぶつかっていく――それこそが、勝利を呼び込む“本当の力”なのかもしれない。
時代は効率化や合理性を求めるようになっているが、それでもなお、心を燃やして全力でぶつかる“我武者羅な姿”が、人を動かし、チームを強くしていく。
とかち帯広リトルシニアが掲げる「全力プレーで限界突破」というスローガンも、まさにこの精神の延長線上にある。
勝つために必要なのは、技術や理論だけではない。
“心”を込めてプレーできる選手こそが、最も信頼できる選手になる。
森監督のグラウンドには、そんな強い思いが静かに、しかし確かに根づいている。

整列するとかち帯広ナイン

整列するとかち帯広ナイン
協力:とかち帯広リトルシニア